「秀吉の城」跡発見
埋もれた歴史光当てた
静岡市の駿府城跡天守台発掘調査で、豊臣秀吉が家臣に築かせた天守の遺構が約330点に及ぶ金箔瓦と共に見つかった。秀吉が、駿河など5力国を領有していた徳川家康を関東に移封した後、豪華絢爛な城を築いて権威を示したことをうかがわせる発見だ。市は発掘を終える2019年度中に駿府城公園の新たな整備方針を決定する意向だが、今回の成果を十分反映させる必要がある。
家康のイメージが強い駿府城だが、「秀吉の城」跡発見は埋もれていた歴史に光を当てた。全国的に注目され、発掘現場を訪れる人も急増している。
専門家は秀吉と家康の天守台の遺構が共存する希少性や、さらなる遺構・遺物が下に眠る可能性を指摘する。今後の発掘や公園整備の在り方を見直す良い機会だ。長期的な視点に立った議論を求めたい。
市は1991年に策定した駿府公園基本計画に、公園内の天守台跡に盛り土して天守台広場を造成する構想を盛り込んだ。駿府城再建を求める市民団体の声が高まったことなどを受け、2014年度策定の第3次総合計画で、天守台の整備に着手するとした。
今回の発掘は16年度から4年計画で実施している。秀吉没後、幕府を開いた家康が大御所となって1607年から行った駿府城大改修で、秀吉の城の天守台を壊し、ほぼ同じ場所に江戸城を上回る日本一の規模の天守台を築いたとみられることも分かった。
市の有識者検討委員会は2010年、詳細な資料のない天守閣の復元に否定的見解を示す一方、天守台については明治期の測量図や写真など現存する史料で復元は可能だとした。田辺信宏市長も石垣造りの天守台復元に意欲を見せる。市は新たな整備方針に復元を盛り込む検討をしているが、拙速に結論を出すのは避けるべきだ。
今回の発見で、5力国時代の家康が築いた城や、今川氏の館跡が下に残っている可能性が高まったと指摘する専門家もいる。復元すれば、その下を発掘するのはほぼ不可能になる。逆に発掘でさらなる新発見があれば、駿府城の価値が一層高まる可能性がある。市の試算によると、石垣造りの天守台復元にかかる費用は60億~100億円。費用対効果も精査したい。
市のシンボルとなり、観光面の効果も期待できる駿府城再建を望む市民の熱意は理解できる。ただ、既定のスケジュールにこだわって議論をおろそかにすべきではない。発掘は計画通り19年度までで十分か、今回発見した遺構・遺物をどのように生かすかなどをもう一度、多角的に検討してほしい。
【静新平成30年11月11日(日) 社説】
0 件のコメント:
コメントを投稿