2013年1月27日日曜日

2013年1月21日月曜日

尖閣、400年前は支配外…明王朝公式日誌に


尖閣、400年前は支配外…明王朝公式日誌に


 中国の明王朝の公式日誌「皇明実録こうみんじつろく」の中に、明の地方長官が日本の使者との間で、明の支配する海域が尖閣諸島(沖縄県)より中国側にある台湾の馬祖ばそ列島までと明言し、その外側の海は自由に航行できるとした記述を、長崎純心大の石井望准教授(漢文学)が見つけ、21日午前に長崎市内で記者会見して明らかにした。

 中国は現在、尖閣諸島を約600年前の明の時代から支配してきたと主張しているが、石井氏は記者会見で、「歴史的に見ても、尖閣を巡る論争は日本側の主張が正しいということが、この史料からわかる」と語った。

 石井氏が見つけたのは、江戸時代初期にあたる1617年8月の皇明実録の記述。沿岸を守る長官だった「海道副使かいどうふくし」(海防監察長官)が、長崎からの使者・明石道友あかしどうゆうを逮捕・尋問した際の記録で、皇帝への上奏文として納められていた。

 それによると、この海道副使は明石に対し、沿岸から約40キロ・メートルの「東湧島とうゆうとう」(現在の馬祖列島東端・東引島とういんとう)などの島々を明示したうえで、この外側の海を「華夷かいの共にする所なり」とし、中国でも他国でも自由に使える海域だと指摘したという。魚釣島うおつりじまなどからなる尖閣諸島は、中国大陸から約330キロ・メートル離れている。

 中国は、明王朝の1530年代に琉球に派遣された使者の記録をもとに、琉球の支配海域の境界は尖閣諸島の東側にある久米島と同諸島の大正島の間にあり、魚釣島などは明の領土だったと主張している。だが、今回の記述により、明の支配海域は沿岸から約40キロ・メートルまでで、尖閣諸島はどこの国にも属さない「無主地」だったことが明らかになった、と石井氏は指摘している。日本政府は、尖閣諸島が「無主地」であることを調査・確認したうえで、1895年に日本に編入したとしている。

20131211436  読売新聞)

2013年1月16日水曜日

沼津代官:野村彦太夫為重の墓


野村彦太夫為重の墓(永明寺)

 沼津代官野村家三代
 沼津代官は幕府直轄領になった駿河国の東部地域を支配するために寛永一〇年(一六三三)に成立しました。同一九年(一六四二)に第二代沼津代官に就任した野村彦太夫為重以後、為利・為政と三代四〇年間にわたり野村氏が世襲で沼津代官をつとめます。
 野村氏は為重の父為勝の代に秀忠に仕え、関ケ原の役や大坂の陣にも参加しました。代官職になったのも為勝の代からで、為重は寛永一〇年に父の跡を継ぎ代官となり、武蔵・相模の幕府領を支配し、沼津代官になってからも関東での代官職を兼務していました。
 野村氏は「地方巧者」の代官として、深良用水の開削、浮島沼の開発などに積極的に取り組みましたが、五代将軍綱吉による代官粛正により天和二年(一六八二)為政は代官を罷免され、代って、野村氏のような在地性を持たない吏僚型の代官が就任することになりました。
〈参考〉関根省治『近世初期幕領支配の研究』(雄山閣出版、一九九二年)

2013年1月6日日曜日

松井俊一氏コラム:EUの構造的欠陥


〔EU(欧州連合)の構造的欠陥〕


ヨーロッパの信用不安が止まらない。
ギリシャに端を発し、スペイン、イタリアなどの各国に、連鎖的な不安が生じている。不安を生んでいる主因は、各国の巨額な財政赤字である。そして赤字の原因は、国民に対して大盤振る舞いを続けてきた、バラマキ政策によるところが大きい。積年にわたる、選挙目当ての愚民迎合政策と、「大きな政府」の、なれの果てとも言える。
財政赤字を厳しく削減しようとすると、途端に、国民から大反対の合唱が起こる。甘やかされて育てられてきた人間を、規律と節度をわきまえた大人の世界に導くのは、容易なことではない。財政再建の道のりは限りなく険しい。
日本も他人ごとではない。国の借金はGDPの二倍に達し、世界で群を抜いている。「身の丈にあった生活」や「入るを計り、出ずるを制す」などという言葉は、もはや死語になってしまったようである。立派な体をした若者が生活保護を受け、ゲームセンターやカラオケでうつつを抜かしている。乗用車を乗り回していながら、生活が苦しいと言って、子供の学校の給食費を払わない親も多い。巨額の財政赤字について、日本の場合は他国と異なり、国内の貯蓄で国の借金(国債)を賄うことができているから大丈夫だと言う人がいるが、そうはいかない。国の借金残高は、既に家計(個人)の貯蓄総額に迫りつつあるのだ。
話しをEUに戻すと、財政再建に四苦八苦している国が多い一方で、優等生のドイツは、マルク時代に比べ、ユーロが安価になったことで、輸出増による経済の繁栄を謳歌している。そのくせ、ドイツはEUの構造改革のために、率先して自らの血を流すことには消極的である。ドイツと並んでEUのリーダー格とされるフランスも、自国経済の脆弱性という爆弾を抱えている。
ヨーロッパ連合には、色々メリットも多い。しかし、メリットを享受するためには、その土台となるべき、相応の規律と努力が大前提になる。一つの独立した国家であっても、現在は世界の多くの国が、財政赤字の削減と景気回復の二律背反に、四苦八苦している状態なのである。
ヨーロッパ連合が、巷に言われているようなメリットを享受するためには、財政、金融部門を土台から再構築する必要がある。少なくとも、各国の財政政策について、同一国並の運営ルールとガバナンスは絶対に不可欠である。経済全般の運営方針についても統一出来るならば、さらに良い。これらが構築されない限り、ヨーロッパの信用不安は無くならない。下手をすればEUそのものが崩壊することすら懸念される。しかし、経済状況がバラバラな各国が独立を保ったままで、これらを実行することは、至難の業である。
実はEUとよく似た話が、日本にもある。
確たる指導力が無く、躾も教育もままならない教師の下で、優等生も劣等生も同一の教室に入れ、甘やかしの授業に終始した結果、劣等生はもとより優等生、さらにはクラス全体の崩壊を招くことになってしまったという、日本の教育のことである。
(二〇一三年一月六日)松井俊一