2018年6月3日日曜日

維新前、沼津に造船工学の曙光:講師 内藤林 大阪大学名誉教授








 近代造船業に沼津の影響
 内藤林・阪大名誉教授が講演


 沼津郷土史研究談話会(沼津史談会)は、沼津ふるさと講座を先月、市立図書館で開催。大阪大学名誉教授の内藤林(ないとう・しげる)氏が「維新前、沼津に造船工学の曙光」と題して話した。
 内藤氏は旧富士川町出身。沼津東高、大阪大学を卒業。研究者としては船舶工学や海洋工学を専門としている。
 内藤氏は、明治中期における国内重工業の大半が造船業によって占められており、造船業が近代日本の工業の牽引役になっていたという事例を示しながら、沼津や伊豆が近代造船業に与えた影響を話した。
 その中で、韮山代官江川坦庵の塾が様々な人材を育成したこと、ロシアの外交使節プチャーチンのために行われた戸田での洋式帆船「ヘダ」号の建造などが挙げられた。特に戸田からは、上田寅吉や緒明菊三郎といった造船関係の人材が誕生した。
 また、内藤氏が会長を務めた日本船舶海洋工学会の前身である造船協会を創立した赤松則良も取り上げ、赤松と沼津兵学校の関係についても話した。

 沼津まちなか歴史MAP
 沼津史談会が江戸時代と現代の地図を合わせ沼津郷土史研究談話会(沼津史談会)は、江戸時代の地図と現代の地図を重ね合わせた「沼津まちなか歴史MAP」=右下の写真=を完成させた。沼津城や沼津兵学校の施設の位置を明らかにしている。
 歴史MAPの土台となったのは、平成二十七年作成の「沼津市基本図」と万延元年(一八六〇)以後に作成されたと見られる「沼津城絵図」。城絵図は沼津藩によって作成され、現在は明治史料館に所蔵されている。
 会員の長谷川徹さんらが取り組んだ地図製作では、二つの地図を重ね合わせる際の基点となる場所の探索が最初の課題となった。当初は大手町に現存している古井戸に着目し、城絵図に記載されている井戸と照合させて基点にしようと試みたが、両者の対応関係に確証が得られなかったことから断念。
 そこで、新たに過去の発掘調査や地質調査の記録から過去と現在の地図の一致点を探ることにした。その結果、沼津城大手門の堀や外堀の位置が判明したという。
 こうして得られた複数の一致点を基点とし、二つの地図をデジタル化して重ね合わせた。完成した地図には、二重櫓(やぐら)や二之丸御殿、六つの門など、城の施設を示すマークが付けられている。また、城跡に設立された兵学校の施設の位置も図示されている。
 歴史MAPは今月十五日から市立図書館二階の郷土史コーナーで配布されるほか、市内小中学校への寄贈も予定されている。

 史談会は、今回の歴史MAPの完成を、同会が掲げる「歴史を生かしたまちづくり」の起爆剤にしたい考えで、市街地を訪れる人に沼津城の面影を伝えるモニュメント建立などの新たな動きにつながることを期待。
 さらに史談会の匂坂信吾(さぎさか・しんご)会長は、沼津城の記憶を市民に親しまれるものとするための次なる構想を抱いている。往時の沼津城のシンボル的存在であり、時には天守閣とも見なされた本丸二重櫓を本丸跡の中央公園(大手町)に再建したいという。この新たな二重櫓の内部を郷土史学習や観光ガイドの拠点とすることも構想に含まれている。
【沼朝平成3063()号】

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