2011年10月8日土曜日
往復書簡24通を発見 41年間の温かな交流
文学者・芹沢光治良と恩師・前田千寸
往復書簡24通を発見 41年間の温かな交流
沼津の記念館 全文まとめ冊子に
沼津市出身の文学者芹沢光治良が「兄貴分」と慕った旧制沼津中(現・沼津東高)時代の恩師前田千寸とやりとりした往復書簡がこのほど、両家で24通確認された。消印などから、期間は同校在学中から大河小説「人間の運命」を書き上げるまで41年にわたり、温かな交流は前田の死後も家族に引き継がれた。生誕115周年記念事業を展開する市芹沢光治良記念館は2人の関係性を知る手掛かりとして、全文を収めた資料集を発行した。
前田は美術を教え、井上靖にも影響を与えた名物教師。芹沢に文芸雑誌「白樺」を勧めて西洋への憧れを植え付け、のちのパリ留学のきっかけを作った。自伝的長編「人間の運命」では「前川」の名で登場し、地元の風景美を「知らない」と答えた主人公を同市の香貫山に連れ、眼下の風景を見せながら「学問や勉強も自分の足元からやるんだ」と諭している。
芹沢は前田を慕い、同市上香貫の自宅にも訪れていた。確認された最初の手紙は17歳の時、伝道師になった父親に代わって進学を援助した叔父との養子縁組を断ったことが書かれている。事前に相談に応じた前田に感謝し、自由へのこだわりや叔父とのやりとりをつづった。
芹沢は卒業後も折に触れて近況報告をし、前田からは「知人が駅前に開く店の名前をフランス語で考えてくれないか」との依頼も。前田の死後、宛先は妻や子どもに代わり、妻からは命日を忘れない芹沢に感謝する文面が多数あった。
資料集は市立図書館などで閲覧できるほか1冊200円で販売している。問い合わせは芹沢光治良記念館〈電055(932)0255〉へ。
(静新平成23年10月8日朝刊)
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