2018年4月21日土曜日

千本遺蹟埋蔵文化財発掘調査現地説明会







砂地に重なる住居址や墨書土器
第二地区センター用地から出土
 第二地区センター建設に先立ち、市教委が予定地で実施した埋蔵文化財発掘調査で多数の遺構と遺物が出土した。調査は、同センター整備のため、既存の旧高齢者就業センターを活用し、これに増築する東側の約三五〇平方㍍で行われた。昨年六月に試掘した後、同年十二月から今年二月まで本調査が行われた。
 埋蔵文化財発掘調査で確認
 他で見られない特徴示す
 今回の建設予定地周辺では、千本プラザの建設に伴う調査(前回調査)が平成五年六月から九月まで約一、二〇〇平方㍍を対象に行われている。
 この時には三十七軒の住居趾や一基の掘立柱(ほったてばしら)建物の遺構が見つかっている。
 また、土器の表面に墨で文字などを記した墨書土器、ベルトのバックルに当たる銅製の帯金具など特殊なものが確認された。
 今回の調査では、確認された遺構のほとんどが住居趾で、重なる形で見つかった。
 その大半は、前回調査で出土したのと同時期の奈良から平安時代のもので、一部の住居祉には、かまど跡が確認された。
 また、遺物の大半は土器で、土師器(はじき)や高温焼成して作られる須恵器(すえき)が多く、このほか青銅製の小型の鏡、かんざし、鉄製の鏃(やじり)なども見つかった。
 鏃が見つかったのは、住居を廃棄する際には、かまども一緒に壊すが、かまどを壊した同じ場所に捨てていく風習によるものだという。
 そして、前回調査では出土しなかったものが今回は確認された。
 古墳時代前期(三世紀後半頃)の住居祉や
土師器で、同時代のものが出土することは予想していなかったことから発掘に当たった市文化財センター職員も驚いたという。
 見つかったのは特殊なものでは、壼などの土器を置く器台と言われるもの。壺などを載せ並べて置いたもので、日常生活で使用したものではなく、祭祀用などと考えられている。
 今回の調査では、古墳時代前期の住居址四軒、奈良から平安時代にかけての住居址十四軒と、土器や釣り針の先端部分と思われるもの、土錘(どすい)と呼ばれる土製の重りなどの遺物が収納ケースで約百箱分、見つかった。
 調査対象地は千本砂礫洲と呼ばれる地形の一部で、富士川から流れてきた砂が堆積し、約一万年前から現在の海岸線と重なる形で存在していた。そのため今回の調査では、遺構が崩れないよう注意しながら作業が進められた。
 このような軟弱地盤であるにもかかわらず住居址が多数出ることは普通の状況では考えにくく、また、前回調査に続き、通常の遺跡では確認されない墨書土器などの特殊な遺物も出土している点が特徴。
 市教委文化振興課文化財調査係の小崎晋主任学芸員は「三〇〇平方材程しか掘っていないのに、十八軒の住居址と百箱分の出土品が出てきたのは、ちょつと異様。『なんだ、こりやあ』という感じがする」と話す。
 住居址は重なって見つかっていることから「絶えず人がここにいて(家を)建て替えていることになる」とし、一時的に出来た集落ではないことを指摘する。
 調査報告書については今年度中に作成される予定だが、遺物量が多いため遅れる可能性もある。

【沼朝平成30421()号】

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