2013年4月11日木曜日

縄文人がサケ煮炊き?土器に料理跡世界最古

縄文人がサケ煮炊き?土器に料理跡世界最古
 1万年前の「焦げ」分析 北海道、福井で出土

 北海道や福井県の遺跡から出土した1万1千~1万5千年前の縄文式土器の焦げ跡に、サケなどの魚を煮炊きしたとみられる脂質が含まれていることを日英などの研究チームが見つけ、11日付の英科学誌ネイチャー電子版に発表した。チームは料理に使われた世界最古の土器としている。
 農耕が始まる前に発明された土器は、氷河期を乗り越えるため食料の貯蔵などに使っていたとみられていたが、栄養価の高い魚類を料理していたことも示すという。縄文人の暮らしぶりの一端を明らかにする成果。
 チームは北海道や新潟、福井、長野、鹿児島の13遺跡から縄文式土器計101個を集め、焦げ跡を分析した。
 このうち鳥浜貝塚(福井)と大正3遺跡(北海道)の土器片の内側に付着した成分を詳しく調べたところ、鳥浜貝塚では35個のうち17個、大正3遺跡では2個のうち1個から魚の油分が劣化したとみられる脂肪酸を検出。海の魚か川魚かは分からないが、深鍋の土器を300度近い高温の状態に熱し、煮炊きした証拠と判断した。
 チームは、詳細に分析していない他の遺跡でも、焦げ跡の炭素や窒素の同位体比から、ほとんどの土器は煮炊きに使われたとみている。素材はサケの可能性が高いという。
 研究に参加した総合地球環境学研究所(京都市)の内山純蔵客員准教授(景観考古学)は「この時代の土器の量は際立って少なく、煮炊きして日常的に食べたとは限らない。儀礼に使った可能性もある」とみている。
 遡上のサケやマスか
 中村俊夫・名古屋大教授(年代学)の話日本や中国、ロシアなどの極東は土器の発祥の地と考えられているが、いつ、何のために作られたのかは良く分かっていなかった。その解明につながるとても面白い研究だ。(調査対象の)遺跡はサケやマスが遡上(そじょう)する途中にあるところが多く、縄文人がこれらをたくさん捕って煮炊きし、油や食物にしたと考えてもおかしくない。これまで一般的に考えられていたことが、科学的に裏付けられた。
 儀式に使った可能性も
 研究に参加した福井県立若狭歴史民俗資料館の鰺本真友美主任(考古学)の話 氷河期の時代に、魚介類を料理するために土器が使われた可能性があると分かった。土器が生まれた理由を知るために一歩前進といえる。検出された脂肪酸は、海や川の生物を煮ると出てくるものなので、煮炊きに使ったのではないか。皆で温かい物を食べるという実用面以外に、神様への供え物や儀式などに使われた可能性もある。今後、さらに解明が進むと期待している。
《静新平成25年4月11日(木)朝刊》

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