2023年5月23日火曜日

沼津公園開園式 駿東郡沼津町の有志者が全力を挙げて計画したる同町千本浜の公園は一昨二日を以て盛なる開園式を行ひたり

 







 沼津公園開園式 明治4182(一九〇八)

 『静岡民友新聞』明治4184

 ●沼津公園開園式 駿東郡沼津町の有志者が全力を挙げて計画したる同町千本浜の公園は一昨二日を以て盛なる開園式を行ひたり

 ▲開園式午前十一時二十分、第一煙花にて市内来賓着席、第二煙花にて市外来賓着席、第三花煙(ママ)にて開式、君が代の吹奏あり、次て小出町長の式辞、李家知事の祝辞、中村報知記者の挨拶、松城県会議員の演説、林沼津鉄工場長の祝辞あり、終つて小出町長の発声にて天皇、皇后両陛下の万歳を三唱し閉会、直ちに園遊会に移りたるが、来賓は予て設けの売店に就き、笑ひつ興じつ酒に折に団子に菓物を両の手にし、各設けの席に戻り、此時余興の芸妓手踊は始まり三番叟、沼津音頭、花がたみ、鶴亀等順次踊り了り、次で天一の手品、松井一座の曲独楽、大神楽以下狩野川の船囃し、底抜け等、数限りなく最も愉快に会を了りたるは午後三時なりし

 ▲招待会 午後四時半、来賓の招待会を臨川館に開きたり、和田伝太郎氏開会の辞を述べ、李家知事の挨拶、寺崎新報記者の演説あり、茲にも余興として松井一座の曲芸、天一の手品、梅坊主の住吉踊あり、紅裾杯盤を斡旋、極めて盛会を告げ午後九時散会せり

 ▲来賓来賓は約六百名にして一般見物人は無慮五万と註せられたり、来賓中の重なる人々は左の如し〔中略〕

 ▲園遊会場 会場は浜寄の一画、欝蒼たる老松の高く踊りつゝある所にして中央に式場あり、之れに東して踊舞台の設けあり、其れより左に廻りて銘酒屋、料理店、茶店、団子、菓物と云へる順序に売店を設け、入口受付より左りして駿豆電気の氷店、日本ビール店及音楽隊席あり、其間、松。竹。梅。花。雪の宴席を設け、舞台裏には警官詰所、応急所あり、其外公園入口より会場に至る道の両側は各売店を以て急に市をなせり

 ▲市中設備 市中は一般に国旗、球灯を掲げ、軒花を列ね、幔幕、店飾等思ひおもいの趣向を凝らし停車場前に一ケ所、郵便局前に一ケ所、浜道緑橋前に一ケ所、以上三個の大緑門(アーチ)と浅間町入口にオリーブ型の大門を造り、停車場前には「祝沼津鉄工場」、郵便局前には「祝電話開通」、浜道のニケ所には「祝開園」なる扁額を掲げ、何れも電気装飾を施し、之れに大国旗を交叉し、球灯、各国々旗数旒を引き、又各町々には花車、踊屋台等の設けありて頗る見事なりし

 ▲天気 朝来雨模様なりしも急に晴れ渡り当日は何んとなく富士、愛鷹、伊豆の諸巒、久能、三保、御前崎共に恍惚として海角に涎を垂るゝが如く、年古る松も急に若返りたるものゝ如く、吹く風さへも殊に涼しく覚ゑたるは最も嬉しかりし(『静岡民友新聞』明治4184

 〔解説〕沼津公園は、明治三九年に御用邸を訪れた皇后が千本浜を愛賞されたことから設置の話が起こり、明治四一年に開園した。開園時の面積は約四万三千坪で、園内には四阿や遊歩道、遊具、運動具などがもうけられた。また、本史料にあるように、八月一日から沼津郵便局で電話交換が開始された。(沼津市誌)


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