2011年2月25日金曜日

最古の人物埴輪


最古の人物埴輪 茅原大墓古墳
 4世紀末「盾持ち人」


 奈良県桜井市の帆立て貝形の前方後円墳・茅原大墓(ちはらおおはか)古墳(4世紀末、国史跡)で、盾を持った最古の人物埴輪(はにわ)が見つかり、市教育委員会が24日、発表した。「盾持ち人」と呼ばれるタイプで、古墳を守護する役割があったとされる。口元は笑っているようにも見える。
 3世紀に誕生した初期の埴輪は円筒形で、人物埴輪は墓山古墳(5世紀前半、大阪府)などでの出土例が最古とされていた。「埴輪研究最大の謎」と言われる人物埴輪の起源が数十年さかのぼることになり、今後の研究に影響しそうだ。
 市教委によると、埴輪は壊れていて、数百点の破片で見つかった。復元できた大きさで幅50㌢、高さ67㌢。同じ古墳から見つかった別の埴輪の特徴から年代を特定した。
 円筒形の埴輪の上部を首のように細くし、前が編みがさのような形のかぶとをかぶった人物の顔を取り付けていた。口は半円状に開き、頬は赤く塗られ、顎には入れ墨のような縦線があった。鼻は取れていたが、黒ずんだ三角形の接着面が残っていた。笑顔には邪悪なものを威圧する意図があったという説もある。
 盾は埴輪の前面を平らに加工し、その両側に張り出す形で四角い板を付けて表現。きれいなひし形や三角形の模様をあしらっていた。
 古墳の前方部と後円部の境目付近の周濠(しゅうこう)跡から見つかった。3段築成の後円部の平らな場所に置いていたものが、落下したと考えられる。「盾持ち人」は胴体部分が盾のため、全身を表現した人物埴輪とは区別する場合もある。
 帆立て貝形の前方後円墳は、通常の前方後円墳の被葬者よりランクの低い首長らの墓とされ、大きな後円部に対し、前方部が短いのが特徴。
【メモ】 埴輪弥生時代後期後半に吉備を中心に分布していた特殊器台と呼ばれる土雛が起源。3撹紀後半に大和で誕生し、前方後円墳が造られなくなるころまで300年余りにわたって墳丘を飾るために作られ続けた。初期のものは円筒形で、家やニワトリ、盾や甲冑(かっちゅう〉などが作られるようになった後、馬や人物も登場する。日本書紀には、主人を亡くした従者が一緒に生き埋めにされる「殉死」の風習に垂仁天皇が心を痛め、殉死する従書の代わりとして埴輪(はにわ)が誕生したとあるが、信ぴょう性は低いとされる。
(静新平成23年2月25日朝刊)