2019年11月14日木曜日

「大嘗宮の儀」


大嘗祭
 天皇陛下の即位に関する一連の儀式の中で、特に重要とされる「大嘗祭(だいじょうさい)」の中心行事「大嘗宮の儀」がきょう14日夜から15日未明にかけ、皇居・東御苑内で行われます。皇位継承に伴う「大嘗祭」は「御一代に一度限り」。古来同じ方法で続けられている意義と、平成時代の始まり以来となる儀式の流れを紹介します。
(企画・制作/静岡新聞社地域ビジネス推進局〉

 一代に一度
 今夜から「大嘗祭~だいじょうさい~」
 天皇陛下が神々に秋の実りを感謝する「新嘗祭(にいなめさい)」のうち、即位後初めて行うものが「大嘗祭」です。各地方の秋祭りや神社の新嘗祭が、収穫に感謝し、地域や住民の平穏、五穀豊穣を祈る儀式であることと同じく、天皇陛下による大嘗祭は、国や国民の無事を願う場という意味合いがあります。
 古来より、一代に一度限りの儀式として盛大に行われ、平安時代中期の法典「延喜式」では、祭祀の区分のうち最も重要な「大祀(たいし)」に唯一定められています。
 皇位継承の儀式として確立したのは7世紀後半の天武天皇や持統天皇の時代とされ、応仁の乱以降の約220年間の断絶を挟み、1687年に東山天皇が復興しました。古来の儀式をそのまま今に伝えているとされ、古代の空気や伝統の重み、日本の歴史の長さを国民が改めて感じ、次の時代に向けて思いを新たにする機会となっています。

 「大嘗宮の儀」は、大嘗祭の一連の儀式の中でも特に重要視されるものの一つで、天皇陛下が、国や国民の安寧、五穀豊穣を祈る場です。会場となる大嘗宮は、大嘗祭に合わせて皇居東御苑に臨時に建てられるもので、古式にのっとった簡素な造りが特徴とされています。儀式の中心となる建物は、東側の「悠紀(ゆき)殿」、西側の「主基(すき)殿」の二つ。それぞれ、「清浄な斎場(=悠紀ご、「悠紀と並び清浄な斎場(=主基)」の意味合いがあり、日本全体も、新潟・長野・静岡を境とし、3県を含む東側の「悠紀地方」と西側の「主基地方」に分けられます。このほか大嘗宮には、皇族などが参列する「幌舎(あくしゃ)」、神々に供える食事をつくる「膳屋(かしわや)」などが設けられます。 夜から未明にかけての「大嘗宮の儀」は公開されていませんが、ひんやりとした秋の空気が醸し出す厳かな雰囲気の中で、白い絹の服に身を包んだ天皇陛下が、悠紀殿と主基殿のそれぞれで、今年収穫したコメを神々に供え、祈りをささげ天皇陛下自らも召し上がると伝えられています。


各地から集まるコメや農・水産物
 大嘗宮の儀を迎えるにあたり、皇居はもちろん、各地でさまざまな儀式が行われてきました。大嘗祭の成功を、全国が一丸となって支えています。
 大嘗祭をめぐる一連の動きのスタートは、即位間もない58日。天皇陛下が、天照大御神や歴代天皇などをまつる皇居の宮中三殿「賢所(かしこどころ)」「皇霊殿(こうれいでん)」「神殿」で、即位礼や大嘗祭の期日を報告しました。13日には、神々に供えるコメの産地を決める「斎田点定(さいでんてんてい)の儀」が行われました。
 この儀式では、亀甲を焼いてできたひび割れの形で吉凶を占う「亀卜(きぼく)」で、本県を含めた東側(悠紀地方)と西側(主基地方)からそれぞれ栃木県と京都府を選び、それぞれから、コメを育てる「斎田」が決められました。
 栃木県高根沢町と京都府南丹市の斎田の稲穂がすっかり育った927日の「斎田抜穂(さいでんぬきほ)の儀」では、前日に身を清めた参列者が見守る中、天皇陛下の使いの「抜穂使」が祝詞を上げ、「大田主」と呼ばれる耕作者が、それぞれの斎田のコメを収穫しました。
 大嘗祭では、斎田だけでなく各都道府県からも、コメ.アワなどさまざまな農・水産物が皇居に届けられます。大嘗宮の一角に供えられる特産物は「庭積机代物(にわづみのつくえしろもの)」と呼ばれ、明治天皇の時代から始まった慣習とされています。本県からは茶、ミカン、ワサビ、乾シイタケ、つお節の5品が送られました。
 大嘗宮の儀の前々日から前日にかけては、天皇陛下をはじめとする関係者のおはらいや期間中の無事を祈る儀式が次々と行われました。きょうは、伊勢神宮と宮中三殿で、神々や歴代天皇に開催を報告した後、きょう14日夜に悠紀殿で、15日未明に主基殿でそれぞれコメを供え、祈りをささげます。翌16日には、大嘗宮の儀が無事終了したことを感謝する儀式も行われます。

国内各所でお祝いムード

 翌16日と18日に皇居宮殿で行われる「大饗の儀」は、神々に供えられたコメや農・水産物で作った料理を参列者と分け合う祝宴です。
 天皇陛下と参列者が、神々に供えた料理を一緒にいただくことを「直会(なおらい)」と呼び、大嘗祭を締めくくるとともに、天皇陛下と国民が、新時代に向けて思いを一つにする意味合いを持ち、大嘗祭の中でも、重要な儀式です。神々に供えられていた「白酒(しろき)」と植物の灰を加えた「黒酒(くろき)」などを、ともに味わいます。
 平成の始まりに行われた大饗の儀は2日間で3回行われ、悠紀地方と主基地方の名所などを詠んだ「風俗歌」を題材に描いた屏風(びょうぶ)が立てられ、各地からのお供え物が並べられたほか、久米舞、風俗舞、五節舞(ごせちのまい)などが披露され、参列者には竹や梅をあしらった銀製の装飾品が贈られました。
 県内の神社などでは、大嘗祭を祝う祭事などが行われ、天皇陛下と国民とが、ともに即位を祝い、国の安寧を願います。大嘗祭が終わると、伊一勢神宮などで天皇皇后両陛下が大嘗祭の終了を報告します。古式にのっとり大嘗宮も撤去され、即位にまつわる一連の儀式が終わります。
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