〔EU(欧州連合)の構造的欠陥〕
ヨーロッパの信用不安が止まらない。
ギリシャに端を発し、スペイン、イタリアなどの各国に、連鎖的な不安が生じている。不安を生んでいる主因は、各国の巨額な財政赤字である。そして赤字の原因は、国民に対して大盤振る舞いを続けてきた、バラマキ政策によるところが大きい。積年にわたる、選挙目当ての愚民迎合政策と、「大きな政府」の、なれの果てとも言える。
財政赤字を厳しく削減しようとすると、途端に、国民から大反対の合唱が起こる。甘やかされて育てられてきた人間を、規律と節度をわきまえた大人の世界に導くのは、容易なことではない。財政再建の道のりは限りなく険しい。
日本も他人ごとではない。国の借金はGDPの二倍に達し、世界で群を抜いている。「身の丈にあった生活」や「入るを計り、出ずるを制す」などという言葉は、もはや死語になってしまったようである。立派な体をした若者が生活保護を受け、ゲームセンターやカラオケでうつつを抜かしている。乗用車を乗り回していながら、生活が苦しいと言って、子供の学校の給食費を払わない親も多い。巨額の財政赤字について、日本の場合は他国と異なり、国内の貯蓄で国の借金(国債)を賄うことができているから大丈夫だと言う人がいるが、そうはいかない。国の借金残高は、既に家計(個人)の貯蓄総額に迫りつつあるのだ。
話しをEUに戻すと、財政再建に四苦八苦している国が多い一方で、優等生のドイツは、マルク時代に比べ、ユーロが安価になったことで、輸出増による経済の繁栄を謳歌している。そのくせ、ドイツはEUの構造改革のために、率先して自らの血を流すことには消極的である。ドイツと並んでEUのリーダー格とされるフランスも、自国経済の脆弱性という爆弾を抱えている。
ヨーロッパ連合には、色々メリットも多い。しかし、メリットを享受するためには、その土台となるべき、相応の規律と努力が大前提になる。一つの独立した国家であっても、現在は世界の多くの国が、財政赤字の削減と景気回復の二律背反に、四苦八苦している状態なのである。
ヨーロッパ連合が、巷に言われているようなメリットを享受するためには、財政、金融部門を土台から再構築する必要がある。少なくとも、各国の財政政策について、同一国並の運営ルールとガバナンスは絶対に不可欠である。経済全般の運営方針についても統一出来るならば、さらに良い。これらが構築されない限り、ヨーロッパの信用不安は無くならない。下手をすればEUそのものが崩壊することすら懸念される。しかし、経済状況がバラバラな各国が独立を保ったままで、これらを実行することは、至難の業である。
実はEUとよく似た話が、日本にもある。
確たる指導力が無く、躾も教育もままならない教師の下で、優等生も劣等生も同一の教室に入れ、甘やかしの授業に終始した結果、劣等生はもとより優等生、さらにはクラス全体の崩壊を招くことになってしまったという、日本の教育のことである。
(二〇一三年一月六日)松井俊一
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