2023年10月21日土曜日

魚見のある風景⑰ 西浦足保片瀬(かたせ)・小足保(こあしぼ)

 




 魚見のある風景⑰ 西浦足保片瀬(かたせ)・小足保(こあしぼ)

 この絵葉書は、表面(宛名面)の体裁(ていさい)から大正7(1918)から昭和8(1933)までの間に製作されたと考えられるもので、袋入りの5枚セットの内の1枚です。外袋には『伊豆ノ勝地西浦名勝絵葉書』とあり、西浦の渡辺薬店が発行したものです。

 写真中央左に電柱があり、その先端付近に3艘(そう)の漁船が見え、その左にも1艘の漁船が見え、その船に向かって中央右の岩礁(がんしょう)から竹を束にしたと見られるアンバ(浮き)が点々と延び、船を過ぎると半円形になっているようです。この形から定置網(ていちあみ)の仲間の根拵網(ねこさいあみ)のようです。この当時の『西浦村誌』によれば、西浦では久連(くずら)から久料(くりょう)までの各地域で根持網漁が操業されていたようです。

 根拵網は末端の「U」字形の囲いの中に魚群が入るのを待って、その口を引き上げて塞(ふさ)ぐ必要があり、口が広くて入りやすい反面(はんめん)、逃げ出すことも容易で、網の中の様子を常時見張っていなければなりません。そのために網の様子が見える高いところに見張台を設ける必要があります。その見張り台である魚見櫓(うおみやぐら)が右上

の林の上に小さく写っています。

魚見櫓は、四本柱の二階建てで、二階には切妻(きりづま)屋根の小屋が設けられています。小屋の外壁は下見(したみ)板で囲われているようで開口部が見えませんが、裏側の海が見える側が広く開いていると考えられます。

 正確な位置は不明ですが、背景の静浦山地の象山(徳倉山)の形から、西浦足保の片瀬から小足保の海岸付近と推定されます。

(沼津市歴史民俗資料館「資料館だより」2392023925日発行)


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