狩野川改修計画平面図(部分) 昭和9年11月
内務省横浜土木出張所発行
吉田町の榊原公幸さんから提供された昭和初期の狩野(らすい)(しんね)川流域の治水事業の進捗状況を示す資料を紹介します。
狩野川の治水事業の計画は、昭和4年に内務省横浜土木出張所から発行された『狩野川改修工事計画概要』にその計画概要が記されています。これには計画平面図も添付されていますが、この図に昭和9年(1934)11月現在の工事の進捗状況を書き加えたのがこの平面図です。
計画概要によれば改修工事は昭和2年度から14年度までの13箇年度継続事業として総工費予算635万円を以って施工するもので、その範囲は修善寺町から海に至る26kmに黄瀬川合流点から上流1㎞を加えた27㎞でした。その要旨は洪水による各種損害を防止し、併(あわ)せて沿岸耕地の排水を良くするものであり、工事内容は概(おおむ)ね両岸に新堤を築き、大平の蛇行部を新たに掘削して直通し、壗之上(ままのうえ)・徳倉の狭隘(きょうあい)部は掘削して拡幅し、洪水を快通(かいつう)ささせ、下流部は川幅を拡張し、新堤を築くとともに堤外を掘削し、低水路を浚渫(しゅんせつ)し、舟運(しょううん)の利便も向上させるというものでした。
昭和42年、建設省沼津工事事務所発行の『狩野川放(わおほら)水路工事誌』によれば、上香貫大洞に改修事務所を設置し、実際に工事に着手したのは昭和4年からでした。その後、昭和8年に期間が3か年延長され17年度までとなり、それ以後も継続事業として小規模な改修工事が続けられ、昭和23年度頃に打切竣功(うらきりしゅんこう)で終了したようです。
この図は、計画期間延長直後にそれまでの進捗状況を示したものと見られます。この時点で大平地区の蛇行部の短絡(たんらく)水路の掘削や両岸の築堤、上香貫地区の流路拡幅掘削や築堤も概ね完了しています。河口部の両岸の掘削と築堤は工事中です。
『狩野川放水路工事誌』には、昭和8年の竣工図が載(の)せられていますが、それによると大平地区の蛇行部の築堤は完了していますが、短絡水路はまだ掘削中の様です。
昭和63年、清水町外原区(そとはらく)発行の『外原』に掲載されている『大平捷水路(しょうすいろ)通水式記念絵葉書』には「9.7.29通水記念1のスタンプが押されており、掘削は昭和9年7月に通水できるまでに進捗したと見られます。
(沼津市歴史民俗資料館「資料館だより」239号2023年9月25日発行)
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