2012年9月19日水曜日

沼津周辺の貴重な文化財(一)  小野眞一


沼津周辺の貴重な文化財()  小野眞一
「休場遺跡と旧石器」
 旧石器時代は三つに分けられている。約十三万年前までを前期旧石器時代といい、以後約三万五千年前までを中期旧石器時代、さらに約一万三千年前までを後期旧石器時代と呼んでいるが、静岡県でも第二東名高速道路建設工事に伴う発掘調査で、約三万年前以降の敲打器(こうだき)やナイフ形石器、石斧等を出土している。
 沼津市青野の秋葉林や金岡足高の子の神(ねのかみ)、中見代、さらに三明寺、柏葉尾、清水柳北、広合、休場(やすみば)等、多くの遺跡も同様で、中には尖頭器や細石器も発見されている。
 静岡市出身の考古学者、芹沢長介氏は、早くから旧石器時代を①握槌(ハンドアックス)、②石刃(ブレイド)、③尖頭器、④細石器(マイクロブレイド)の四段階に区分し、筆者も県東部各地を踏査して、昭和三十二年に『静岡県東部古代文化総覧』を蘭啓社より刊行し、富士川以東の駿河・伊豆地域の遺跡死延べ一〇八〇カ所記載したが、その中には僅かではあるが、旧石器時代の遺跡数カ所を登載した。
 続いて三十六年に静岡県教育委員会刊行の『静岡県遺跡地名表』には同時代遺跡が県全体で四七カ所、そのうち東部は三島市四、沼津市六、旧吉原市四、旧富士郡四、熱海市・賀茂郡各一が掲載されていた。
 この県東部旧石器時代(無土器時代・先土器時代)で最も著名なのは沼津市宮本の休場遺跡で、三十七、三十九年にわたり、当時、沼津在住の筆者並びに笹津海祥氏(妙海寺住職。故人)の指導で、沼津女子高(現加藤学園高)郷土研究部が小発掘した。
 その結果、同遺跡は、旧石器時代末期の細石器文化器の遺跡であることが判明し、これに注目された明治大学、杉原荘介氏の発案で、三十九年に同大学考古学研究所と沼津女子高が共同で本調査を実施した。
 調査では、三十九年九月二十七日から十月七日まで十一日間にわたり愛鷹山地南側中腹の小高い隆起部、標高二九一・六㍍の高山西側斜面を発掘した。


 層位は黒色腐蝕土層の表土が約四〇~六○㌢で、出土遺物は無く、その下方の赤褐色ロームや、暗黒色土層を経た約二㍍下方の黄褐色ローム層(休場層)から約一万四千年前の石囲い炉二カ所=左上の写真=と、四四〇〇個以上の細石器=写真右=が掘り出され、その結果は明治大学考古学研究室発刊の『考古学集刊』に発表され、国指定の史跡となって今日に至っている。
 まさに同遺跡は、旧石器文化を知る貴重な遺跡であり、東椎路北方の現地に近い道路脇に記念碑が建てられている。
 (元常葉短大教授・元加藤学園考古学研究所長、富士市境)
《沼朝平成24919()号》

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